「選ぶ」で選ばれている。
仲卸は、ただの「仲介業者」でも「中間業者」でもない。
たしかに、漁師のように、海で勝負しているわけでもない。
小売店のように、消費者の顔を直接みることもない。
でも、水産市場の「信頼」をつくるのは、自分たちだ。
質も量も値段も、日々変動するなか、いい魚を瞬時に選別して、いい値段で買う。
一鱗共同水産は、そのプロ集団。
生産者の水揚げした魚を、小売につなげて生活者に届ける。
目利きは、誰にも負けない。
PROFILE
本間 雅広
営業課長(現営業部長)。創業者の孫。将来の3代目社長。自分が経営幹部になった時にどんな会社にしたいのかを日々思い描いている。趣味は買い物。特に靴や服には目がない。
―本間さんが子供の頃は、自分の家がどんな商売を行っているのか知っていましたか?
本間:なんとなくは分かっていたのですが、中学生の頃まで普通の魚屋さんだと思っていましたね。
―職場に来たことはなかった?
本間:小学生の頃に一度来たことがあるようですが、ほとんど記憶にないですね。初出社の日もカーナビに住所を登録して誘導してもらったくらい、会社の場所も曖昧でした(笑)
―自社の仕事をある程度正確に理解できたのは入社してからですか?
本間:そうですね、「仲卸」という言葉からのイメージはありましたけど、市場での具体的な仕事や取引先のことなどは分からず会社に入っていますね。
―入社して何年になりますか?
本間:25歳で入社して今年で5年です。2月からは課長をやらせてもらっています。入社前は高校で社会の先生をしていました。
―高校の先生!? それはまたすごい転身ですね。跡取りとしていつかは…と思っていたのですか?
本間:いえいえ、あまり考えていませんでした(笑)
―入社して一番びっくりしたことは何ですか?
本間:魚の量にまず圧倒されましたね。例えばサンマだったら何万ケースもばーっと並んでいるんです。注文も「どこどこのスーパーから1000ケース」という単位で、「1000!?」と驚きました。
―物量がまず驚きだったんですね。
本間:はい。なにこれ!?という感じで、市場から外に出そうなくらいの量で。なぜ毎日こんなに捕って魚が絶滅しないんだと不思議なくらいでした。
―課長になってからは何か変わったことはありますか?
本間:毎月何千万という課の売上数字に対して、責任を持つようになりましたね。
―課長として心がけていることは?
本間:新規顧客を開拓することですね。仙台とか福岡の会社に電話をかけて情報提供をしたり魚を送ったり。あと魚種別で売上が出ているんですけど、競合に比べて弱いところの売上を作りにいきたいと思っています。
―他社より自社が売れていないって分かるんですね。
本間:例えばタラの入荷が札幌に1000箱あり、自分は100箱仕入れて、隣をみたら300箱仕入れているということがあるわけです。そういうときは「負けた!」と思います。100箱しか売れないと思うから、それしか仕入れないのですが、隣は売れるから300箱も買っているわけじゃないですか。どこよりも一番買いたい、仕入れたい、その気持ちは強いです。セリだって本当は全部買いたいです。
―それはなぜでしょうか?
本間:結局たくさん買える仲卸にお客さんがついてくるんですよね。そこに行けば商品があって安心だし、たくさん買っているから安くしてもらえるし。売れない量を仕入れるのは精神的にきついですけど、自分たちが買わないのに他が買っていたら、それはもう悔しいんですよね。
―悔しさの源泉って何ですかね?
本間:買えないということは、売れないことを認めたということになるからですかね。当然ロスがでないように賢く買うというやり方もあります。でも「それしか買えない=それしか売れない」とみんなに思われたくないのでそうはしないです。
―みんなというのは誰でしょう?
本間:お客さんも、同業者も。あとどちらかというと仕入先の丸水さんやカネシメさんからですね。「これしか買えないのか、しょぼいな」と思われたくないです。「こいつすごいな」と思ってほしいので、なんとか買う量だけは同業者に負けないようにしています。その分、値段はシビアにいきますけどね。
―損することも当然でてきますよね?
本間:それはそうですが、損をしたくないという気持ちが強くなると買えません。損は仕方がない。例えその日に大赤字が出ても、月のトータルで利益を伸ばせればいい。そう考えてやっています。上司からも「仕入れは絶対に負けるな」「500ケースあるから助けてください、と仕入先が言ってきているのに助けられないような奴にはなるな」と教育されてきました。それが正しいかどうか分かりませんが、ついてきてくれているお客さんはいます。たくさん仕入れた分「売らなきゃ」という気持ちも一層大きくなります。
―たくさん仕入れ続けるのはメンタル的にはきつくないですか?
本間:ほんときついですよ。「どうしようどうしよう」と眠れない時もあります。「今日仕入れた分がまだはけてないから、明日はもう買えないよ」って。そういう時に限って天気予報を見ても波がなくて、「これは入荷量が多いぞ」というパターンになります。でも他が買っていたらやはり負けたくない。
―負けず嫌いはもともとの性格ですか?
本間:子どもの頃は内気でした。小学生から大学生までソフトテニスを続けて、その中で負けず嫌いな性格が養われたと思います。
―環境が性格に影響したんですね。
本間:あと親から甘やかされなかったのも心を強くしたと思います。大学時代を仙台で過ごしたのですが、仕送りがめっちゃ少なかったんですよね。急な坂の下にある六畳一間3万2000円の部屋に4年間住んでいて。アルバイト代を服や靴につぎ込んでいたこともありますが、次の仕送りの日まで10日間を500円で過ごさないといけないようなこともありました。
―500円ですか!?
本間:その時は毎日もやしでしたよ(笑)米も買えなくて。飲みものですら買えないので、ペットボトルに水道の水を入れて学校に持っていってなんとかやり過ごしました。
―休みの日はどのように過ごしているんですか?
本間:家族で買い物ですね。普段作業服なのですごいおしゃれをして出かけます。服を着るのが一番ストレス発散かもしれませんね。スーパー行くのにも、近くのコンビニに行くのにもばりっとおしゃれをしていきます。スエットとかジャージとかじゃなく。その時くらいしか買った服を着られる時がないので。
―服が好きなんですね?
本間:昔から服と靴が好きです。結婚する前は買った靴をずらーっと部屋に並べてそれを見ながらお酒を飲むのとか最高に楽しかったですね。クローゼットも普通は女の人の方が広く使っているかと思うのですが、うちは逆転現象で僕の方が妻より使っています。
―休みの日は仕事から頭を切り替えている?
本間:それがそうでもなくて。会社の将来に役立つアイデアはないかといつもアンテナを張っている状態です。そこに何かが引っかかるとそのことについてずっと考え出すんですよね。あまり器用なタイプじゃないので。そうなると人から話をされていても、聞いてないと思います。
―「ちゃんと聞いてるの?」って怒られますよね?
本間:「あ、ごめん、聞いてなかった」みたいな(笑)。飲み会も昔はただ楽しく飲んでいてほとんど記憶がありませんが、最近は他業界の人と飲む時とか、仕事モードでの飲み会の記憶は半端ないですね。
―市場に仲卸の会社はたくさんありますが、一鱗共同水産の良いところってどんなところだと思いますか?
本間:温かみがあって、人情味があるとこですかね。あとは亡くなった会長や社長が頑張ってきてくれたおかげで、今でも「おじいさんにはお世話になったから」と祖父の恩で親身にしてくれるお客さんや同業者がたくさんいることです。
―会社が積み重ねてきた信頼貯金が大きいんでしょうかね?
本間:そうだと思います。会社でちょっと問題があった時も電話がきて「大丈夫か?飲みにいくぞ」と気にかけて誘ってもらったり。
―就職活動をしている若い人たちに「うちの会社いいよ」と伝えるとしたらどんなところですか?
本間:これを言ったらこいつ大丈夫?と思われるからあまり言ってないですけど、なんというか、うちの会社に関しては後継者として自分がいるので、だから大丈夫だとみんなから思われるようになっていきたいです。
―覚悟を決めているんですね。
本間:会社をいかに成長させていくのかということしか考えていないです。売上・利益という会社規模のこともだし、仲卸というスタイルから飛び出してもいいとも思っています。市場で仕事をしていたら年間70億80億という売上は現在ありますが、それに甘んじることなく、自分たちの仕事に付加価値を高めていきたい。もっともっと他にやり方があるんじゃないかと思っています。
―この仕事をやっていてよかったなと思う時はどういう時でしょうか?
本間:やっぱりお客さんから「ありがとう!」「儲かったわ!」と言ってもらえる時が1番ですかね。本当はこっちも儲かっているんですけどね(笑)でもそうやって感謝されることが嬉しいです。
―他にはありますか?
本間:スーパーに行くと自分で仕入れて売った魚が鮮魚コーナーに並んでいるので、自分の仕事がちゃんと誰かに届いている、人の暮らしにつながっている仕事だなと実感できます。苦労していっぱい買った甲斐があったなと報われる気持ちになりますね。
わたしたちの想いに共感し、ともに未来を作っていく仲間を募集しています。
詳しい情報はこちらをご覧ください。
一鱗共同水産株式会社
〒060-0008
北海道札幌市中央区北8条西20丁目1-20
TEL 011-621-4151
市場 TEL 011-631-5401